休刊の辞

《ナイトランド》無期休刊のお知らせ

日頃より、《ナイトランド》をご愛読いただきまして、ありがとうございます。

「幻視者のための小説雑誌」として創刊した《ナイトランド》は、昨年9月より充電期間を置き、今夏より再開すべく、準備を進めておりましたが、諸般の事情により活動再開が困難となりました。
皆様にお届けしたい作品は多々あるのですが、新たな販路の設立をはじめ解決を要すべき問題が山積して、残念ながら、現在の私共には力が及びませんでした。 苦慮の末、近い将来に改めて再開するために、《ナイトランド》を無期限の休刊に入らせていただくことにしました。 同時に、予告しておりました《ナイトランド叢書》も企画を凍結させていただきます。

作家、翻訳者、画家、デザイナーの皆さまの素晴らしい仕事のお陰で、《ナイトランド》はホラーの傑作を何編も日本に紹介して参りました。 まだまだ日本の読者に読んで頂きたい物語、触れて頂きたいアートが数えきれないほど残っていることを思えば、我々の力不足が口惜しくてなりません。 現在の社会的環境が、怪奇幻想の種が芽吹き、大きく育って、花を咲かせるには、あまりに厳しいものであることを痛感しています。 ミニマムな出版活動には天の機、地の利が巡ってくるのを待つほかない、この現状をご理解いただけますよう、お願いいたします。 とは申しましても、《ナイトランド》が休刊しても、それがトライデント・ハウスの活動の休止を意味するものではありません。
時が巡り、機が満ちましたなら、また皆様に必ず、夜の国への案内状をお届けに参上いたします。

そのときまで、どうぞお元気で。

2014年5月吉日
トライデント・ハウス一同

《ナイトランド叢書》創刊!

ナイトランド叢書

親愛なる幻視者の皆様。

まもなく、ホラー&ダークファンタジー専門誌《ナイトランド》から、名のみ聞かれた名作や、新たな才能の輝きに溢れる傑作を揃えた、《ナイトランド叢書》が誕生します。
小出版社ならではの企画を、小出版社だからこそできる販売方法で、皆様のお手元にお届けすべく、ここにお知らせ申し上げます。 刊行するのは、いずれも諸国で高い評価を受けた作品ばかり。
有名作家の代表作や幻の作品から、新鋭作家の会心作まで、本邦初訳の作品を、美麗な装丁でおおくりします。

「ダーク・カントリー〈自選版〉」(仮題)
デニス・エチスン
植草 昌実・訳

"The Dark Country and Other Stories"
by Dennis Etchison (Scream Press, 1982)

ブラッドベリを継ぐ怪奇幻想の詩人が自選した短篇傑作集。世界幻想文学大賞受賞

レイ・ブラッドベリに比される短篇ホラーの名手であり、名アンソロジストでもありながら、日本では知る人ぞ知るデニス・エチスン。その第一短篇集から、作者自身が精選して贈る、日本版オリジナルの傑作集。
邦訳され注目を浴びた「真夜中のハイウェイ」「最後の一線」「遅番」はじめ、世界幻想文学大賞受賞の表題作ほか、14篇を収録。

The first Japanese-language collection of masterpieces selected by World Fantasy Award winner Dennis Etchison!

The book will contain 14 stories selected by the author, including his acclaimed "The Dark Country." The book will be translated by established professional translators well-known in the genre in Japan, and thoroughly checked for accuracy, with design and artwork by leading Japanese artists and books designers. It will be released in a limited edition of 2000 unnumbered copies, and will not be reprinted.





「失われた者の谷 ハワード怪奇小説傑作集1」(仮題)
ロバート・E・ハワード
中村 融・訳

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"Valley of the Lost and Other Horror Stories"
by Robert E. Howard

ヒロイック・ファンタジーの巨人が遺した怪奇幻想の傑作を、第一人者の編訳で贈る傑作集!

ヒロイック・ファンタジー不朽の名作《コナン》シリーズの作者、ロバート・E・ハワードは、ラヴクラフトの盟友であり、ホラーも数多く遺している。
本集では、ハワード研究の第一人者であり、SF、ホラーのアンソロジストでもある訳者が、ウエスタン・ホラーの表題作、怪奇探偵小説「墓地の怪事件」、ボクシングを題材とした本邦初訳作「トム・モリノーの魂」など、多彩な傑作を精選。ハワード・ファン、ホラー愛好者必携の一冊である。

(収録作品は決定次第公表します)







8号発行についてのお知らせ

ホラーは今日、最も大衆的な読み物であると同時に、最も前衛的なる文学思潮である (創刊号より)

昨年三月、ナイトランドの創刊にあたり、このように書きました。

「高品質のホラーを、ホラーを愛する読者氏へ提供し続けること。そうして海外と日本との断絶を解消し、海外と日本国内で、よりホラーを深化させ進化させる優れた才能を発見し、育て、内外に紹介すること。それこそがナイトランドの使命であり、トライデント・ハウスの理念である。」
その理念に基づき、本誌は英語圏の活気あるホラー作品から、高品質のものを厳選し、掲載してきました。そして、多くの人々の御協力を得ました。内外の著者、翻訳者、イラストレーター、デザイナー......そして何よりも、読者の皆様。読んで、楽しんでくださることが、私たちへの最大の御協力となっています。
しかし、事業を進めれば、問題も起きてきます。著者との契約にはじまる様々なコストは、経済上の周辺事情も含めて、号を追うごとに増してきています。また、計画中の新たな展開は、準備期間と費用とを必要とするものです。そのために本誌の質を落としてはならない。そこで、次号の発行を来年まで遅らせることを選択しました。毎号を楽しみにしてくださっている読者の皆様には、お詫びするほかありませんが、これもナイトランドの成長のためとお許しいただき、見守っていただきたく、ここにお願い申し上げます。

7号・2013秋

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【特集・妖女!】 Magical, Mystic and Monstrous Women!

  「人でなしの恋」は、江戸川乱歩の短篇小説の中でも秀逸な一篇だ。夫の不審な行動をいぶかしむヒロインの、情感あふれる一人称の語りも印象深く、広い意味でのホラーの秀作として世評も高い。それよりまず、題名からして秀抜ではないだろうか。「人でなしの恋」とはどういう恋なのか。読まずにはいられない。これから読むかたの興味をそがないよう、ちょっとだけ書いてしまうと、人でなしというのは非道とか無情とかを指すのではなく、文字どおり「人間でない」ということ。残念なのは、乱歩が古今東西の怪奇小説を語った「怪談入門」にも「恋愛怪談」という項目があるのだが、中国の古典作品のみ語っており、この自作には言及がなかった。
  ホラーの名作の中にも、ロマンスや、エロティックな要素を含むものは多い。が、それらのうちのかなりの数が、男性の側から書いているような気がする。澁澤龍彦の翻訳で名高いゴーチエの「死女の恋」では、修道士が女吸血鬼との恋を回想する。泉鏡花の「高野聖」は、修行中の僧が飛騨の山中で、獣に囲まれて暮らすこの世ならぬ美しい女に誘われる。平井呈一の「真夜中の檻」の主人公も男で、出会うのも異界の美女。レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」は女性の視点から語られる話だけれど、タイトルどおり相手も女性だ。そうそう、愛しい男のもとを女幽霊が夜ごと訪れる「牡丹灯籠」という古典を、忘れてはいけない。
  ここまでに挙げた作品の作者はみな男性。女性よりも恋愛に対して夢見がちなのだろうか。「人でなしの恋」に身を委ねたい、という欲求は、止まないものなのかもしれない。
  女性作家の恋愛怪談の作例として、エリザベス・ボウエンの「悪魔の恋人」を見てみると、作中でヒロインを迎えるこの世ならぬ男性が、彼女にもたらすのは、膨らんでゆく不安ばかり。そして、出会ったときに恐怖の針が振り切れる。普通の人間が相手でも、恋は楽しいばかりじゃない。まして相手が人ならぬものなら、怖いお話にならないわけがない。
  それでも、最近はロマンスにも「パラノーマル」というジャンルができて、美青年ヴァンパイアやゾンビのナイスガイが、王子様や野生児のお株を奪っているのだとか。「悪魔の恋人」の設定も、そちらに持っていけそうだが、怖さは残るのか、それとも他のものに変わってしまうのだろうか。
  今回の特集では、ブラム・ストーカー賞の受賞作を筆頭に、アメリカ、イギリス、カナダの新鋭たちの「妖女」テーマの作品を取り上げた。

ナイトランド・ホラー・セッション#2

朝松健×高橋葉介
「幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌『ナイトランド』presents
ナイトランド・ホラー・セッション2

「死者の町」(仮題)
ジョー・R・ランズデール
友成 純一・訳

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"Dead in the West"
by Joe R. Lansdale (Space & Time, 1986)

 生ける死者の群れに二挺拳銃で立向かうメルセル牧師。ウエスタン・ホラー開幕編!

テキサス州の小さな町、マッド・クリークは呪われていた。町民たちが先住民の呪術師をリンチで殺して以来、夜毎に死者の群れが襲来し、人々を食い殺していくのだ。
その町に現れたのは、馬に乗った一人の牧師、ジェベディア・メルセル。神を疑い酒に溺れていた彼は、血に飢え襲い来る死者たちに、聖なる二挺拳銃で立ち向かう!

ナイトランドに掲載され絶賛を受けた「凶兆の空」のメルセル牧師、最初の冒険。ランズデール幻の初期代表作。










6号・2013夏

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かつて、ホラーがごく身近な娯楽だった頃を覚えています。折しも、のちに「バブル」と呼ばれた好況の時代。高校生の少年少女が、デートなのに「死霊のはらわた」を上映している映画館の前で入場時間を待っている。レンタルビデオ店には「ホラー」だけでなく「スプラッタ」「ゾンビ」の棚まである。毎月数冊の海外ホラーが、文庫で発売され、持ち重りのするほど紙質も印刷も豪華な女性雑誌でスティーヴン・キングが取り上げられる。景気の波はホラーにも良い時代をもたらしたようでした。

こと、若い人向けのメディアでのホラーの理解には、脱帽しました。たとえば、あるティーンエイジャー向けのファッション誌には「怖いものを怖いと思えるのも、それでも興味を持つのも健全なセンス」と書かれていました。キングはあるインタビューで「自分が怖れる状況をあえて小説の題材とすることで、その恐怖を乗り越える」と語っていましたが、それと合わせて、作り手も受け手も健全だからこそホラーは楽しめるものになるのだ、と、あらためて思ったほどです。

ホラーで描かれるのは、おおむね不幸な状況です。だからといって、人の不幸を娯楽にするようなジャンルでは、けっしてありません。突然の死。理不尽な苦痛や暴力。日常を踏み荒らす怪物。変貌し安心が消え去った世界......作品の中の恐怖は、現実の恐怖の誇張された鏡像なのでしょう。そして、たとえ非力でも、その恐怖に正面から立ち向かう主人公たちの姿から、私たちは現実の恐怖に抗う勇気を得られる。ホラーの役割は、おそらくそこにあるのでしょう。隆盛をきわめる実話怪談も、何度めかのブーム到来といわれるクトゥルー神話も、おそらくはそんな役割を負っているのかもしれません。

さまざまな不安のなかに私たちが身を置く現在、安楽だったあの時代にもさらに増して、ホラーは役に立つのではないか。そんな思いがよぎることが、ことに最近、多くなりました。

6号: "Crowdsourcing Cthulhu," by Matt Carpenter

6号:クトゥルー・インフォメーション【海外篇】

This article was printed in Night Land No. 6, in Japanese translation.


Since the potential for connectivity the internet provides has begun to be realized, Cthulhu mythos fans have been living in a golden age. More small presses have published intriguing collections, the amount of free online fiction available has skyrocketed and fans are able to keep tabs on and communicate directly with their favorite authors with a facility that beggars my ability to describe it; in fact, I think in some ways it is easy to get jaded about the burgeoning popularity of my favorite genre of fiction. However, the economic downturn of 2008-2009 has had ripples unavoidable even if you live in R'lyeh. Small presses come and go with distressing regularity. The following is a partial list of businesses that I used to depend on for regular publications have all either tanked or had to do some serious downsizing: Lindisfarne Press, Mythos Books, Elder Signs Press, Arkham House and Golden Gryphon Press. So all is good, but all is bleak, right?