5号・2013春

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「新しい恐怖と、新しい冒険と、新しい風刺と、新しい文明 批評を展開する」......年季の入ったSFファンならば、御記 憶のことでしょう。これは、早川書房が一九五七年に〈ハヤ カワ・SF・シリーズ〉を創刊したさいのキャッチフレーズ です。
 ホラー小説誌の編集者としては、「恐怖」という言葉があ ることに惹かれますが、そういえば、それに先立つ一九五〇 年に創刊されたSF叢書〈アメージングストーリーズ日本語 版〉(誠文堂新光社)は「怪奇小説叢書」と名乗っていました。 ホラーとSFは兄弟か。たしかに「ありえざるもの」を「あ りうるもの」にする、人間の自由な想像力の産物である点で は、そう言うこともできるかもしれません。
 小説も映画も、「ミステリーゾーン」や「ウルトラQ」の ようなTVドラマも、SFとホラーは、私たちにさまざまな 驚きをもたらしてきました。その驚きはいつも斬新で、鮮烈 で、それをもたらすものがSFなのかホラーなのか、はっき りとは区別できないものでした。
 たとえばラヴクラフトが恐怖の対象として描いたのは、悪 魔や死霊などでなく、太陽系の彼方から来る侵略者や、超古 代の遺跡に潜む異生物でした。彼以降の作家、たとえばロバー ト・ブロックやリチャード・マシスン、レイ・ブラッドベリ らは、ホラーの題材や約束事と、SFの発想や設定とを合わ せ、奇想をさらに展開していきました。ジャック・フィニイ の『盗まれた街』やジョン・ウィンダムの『呪われた村』は、 SFとして出版されながら、類を見ない恐怖で読者を捉えま した。
 それらを受容してきた世代が輩出したのが、スティーヴン・ キング、ディーン・クーンツら、ホラーもSFもない交ぜた、 「モダン・ホラー」の作家たち。そして、さらに次の世代の 作家たちが今、「新しい恐怖」を創造しつづけています。メディ アが多様化した今だからこそ生まれる、さらに多彩なアイデ アを活用して......。
 ここ「夜の国」では、ホラーかSFか、という分類は、ひ とまず忘れることにしましょう。驚異と恐怖に満ちた冒険の ひとときを、お楽しみいただくためにも。


【特集・サイバーパンク・SF/ホラー】Cyberpunk SF/horror

〈特集解説〉今こそ、サイバーパンク・ホラー 朱鷺田 祐介

  • 「エレクトリック・アイ」 ローレル・ハルバニイ 増田 まもる・訳 藤原 ヨウコウ・画
    ぼくはきみを見ている。いつでも、どこからでも......21世紀の〈異色短篇作家〉登場!
    "Electric Eye" by Laurel Halbany
  • 「切断された男」 ブライアン・M・サモンズ 野村 芳夫・訳 松山 ゆう・画
    闇に囁くものを追い、探偵はアーカムを走る。〈クトゥルーパンク〉の扇動者が導く闇の迷宮。
    "Disconnected" by Brian Sammons
  • 「快楽空間」 グリン・バーラス 植草 昌実・訳 上院 芭郎・画
    殺人サイトに潜入した刑事を待つものは? 〈クトゥルーパンク〉の伝道師が招く甘美な悪夢。
    "Fleshworld" by Glynn Barrass
  • 「ブージャム」 エリザベス・ベア&サラ・モネット 安原 和見・訳 藤原 ヨウコウ・画
    宇宙海賊船ウェイトリー号が略奪した積荷は災厄の種? 女性SFユニットの会心作!
    "Boojum" by Elizabeth Bear and Sarah Monette

●英国幻想文学大賞受賞作

「柩職人の娘」 アンジェラ・スラッター 田村 美佐子・訳 佐竹 美保・画
柩を作る「わたし」が恋した美少女。だが、すでに死んだ父が彼女を見て言うには......
"The Coffin-Maker's Daughter" by Angela Slatter

【連続企画】夜の声〈ホラーの巨匠:作品とインタビュー〉

第1回 ロバート・ブロック
〈名作発掘〉「夢の窓」 安野 玲・訳 髙木 桜子・画
孤独な少女を夢に訪れたのは誰? 知られざる「クトゥルー神話」作品
〈インタビュー〉ラヴクラフトからハリウッドまで 聞き手:ダレル・シュワイツァー 棚藤 ナタリー・訳
"The Unspeakable Betrothal" by Robert Bloch

●特別書き下ろし創作

「Play of Color」 石神 茉莉 山野辺 若・画
妻が消えた。残されたオパールの指輪を手に、私が不思議な玩具館を尋ねると......

【連続企画】井上雅彦選・日本SF/ホラー名作再録

センス・オブ・ホラー、ブラッド・オブ・ワンダー 
第一回 小松 左京
〈名作再録〉「海の視線」 YOUCHAN・画
船旅の夜、彼がデッキで出会ったのは霊能をもつ老婦人。彼女が感じた「視線」とは?
〈解説〉井上 雅彦

●エッセイ

  • クトゥルー・ミーツ・アメリカンコミックス(前)森瀬 繚
  • ホラー作家・石上三登志 植草 昌実

●連載小説

The Faceless City #5 S∴O∴D教会の葬送歌 朝松 健 槻城 ゆう子・画
拉致されたキャサリンを救うため、神野十三郎とリアはダゴン秘密教団の本拠地へ!

●連載コラム

  • 【リレー・エッセイ】私の偏愛する三つの怪奇幻想小説
    ほんとうは一番怖い〈存在〉の恐怖 荒巻 義雄
  • Asian Horror Now (5) 立原 透耶
    勢いのある新創刊の中国ミステリー・ホラー雑誌
  • 金色の蜂蜜酒を飲みながら (5) 朱鷺田 祐介
    クトゥルフ神話とゲームの周辺
  • ファンタスティック・シネマ通信 (5) 鷲巣 義明
    『サイコ』の制作過程を追いながら、〝サスペンスの神様〟に迫った実録ドラマ!
  • ホラー&ダーク・ファンタジー書評 Night Library (3) 笹川 吉晴
  • クトゥルー・インフォメーション(海外編) マット・カーペンター
    ラヴクラフティアン・アート英文オンライン